宅建業法 営業保証金の供託と届出について

宅建業法 営業保証金の供託と届出について

宅建業法における営業保証金の供託と届出について解説します。なぜ営業保証金が必要で、どのように供託し、届け出るのか?また、供託金額や還付、不足時の対応など、具体的な手続きについても詳しく説明します。宅建業を始める際に押さえておくべきポイントとは?

宅建業法における営業保証金制度

営業保証金制度の概要

🏦

目的

 

消費者保護と取引の安全確保

💰

供託金額

 

本店1000万円、支店ごとに500万円

📝

手続き

 

供託後、免許権者への届出が必要

 

営業保証金制度は、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)に基づいて設けられた重要な制度です。この制度の主な目的は、消費者保護と取引の安全確保にあります。宅建業者が取り扱う不動産取引は、一般的に高額であり、消費者にとって人生の一大イベントとなることも少なくありません。そのため、万が一、宅建業者の不正行為や債務不履行などにより消費者が損害を被った場合に、その損害を補償するための資金を確保しておく必要があるのです。

 

営業保証金の供託金額は、本店については1000万円、支店を設置する場合は1支店につき500万円と定められています。この金額は、宅建業者の規模や取引量に関わらず一律に適用されます。

宅建業法 営業保証金の供託方法

営業保証金の供託は、宅建業者が事業を開始する前に行わなければなりません。供託先は、宅建業者の主たる事務所(本店)の最寄りの供託所となります。供託所は通常、法務局に設置されています。

 

供託の方法には、現金による供託と有価証券による供託があります。有価証券による供託の場合、国債や地方債などが認められていますが、その評価額は額面金額の80%とされています。

 

供託制度の詳細について(法務省ウェブサイト)

 

供託制度の詳細や手続きについて、法務省の公式情報を参照できます。

宅建業法 営業保証金の届出手続き

営業保証金を供託しただけでは、宅建業を開始することはできません。供託後、宅建業者は遅滞なく、供託した旨を免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)に届け出なければなりません。この届出は、所定の様式(営業保証金供託済届出書)を使用して行います。

 

届出には以下の書類を添付する必要があります:

  1. 供託書の写し
  2. 供託所発行の供託証明書
  3. 供託金額計算書

 

届出を受理した免許権者は、その内容を確認し、問題がなければ受理証を発行します。この受理証の交付をもって、宅建業者は正式に事業を開始することができます。

宅建業法 営業保証金の還付と不足時の対応

営業保証金は、宅建業者の不正行為などにより損害を被った消費者が、その補償を受けるために還付を請求することができます。還付請求は、債権者が供託所に対して行います。

 

還付により営業保証金の額が法定の金額を下回った場合、宅建業者は不足額を追加供託しなければなりません。具体的には、免許権者から不足額供託の通知を受けた日から2週間以内に追加供託を行い、その旨を届け出る必要があります。

 

この追加供託と届出を怠ると、免許取消しの対象となる可能性があるため、注意が必要です。

宅建業法 営業保証金と保証協会制度の比較

宅建業法では、営業保証金の供託の代わりに、宅地建物取引業保証協会(以下、保証協会)に加入することも認められています。保証協会に加入する場合、営業保証金の供託は不要となります。

 

以下は、営業保証金制度と保証協会制度の主な違いです:

  1. 初期費用:

    • 営業保証金:1000万円(本店)+ 500万円×支店数
    • 保証協会:弁済業務保証金分担金(60万円~)+ 入会金 + 年会費

  2. 手続きの煩雑さ:

    • 営業保証金:供託手続きと届出が必要
    • 保証協会:加入手続きのみ

  3. 還付請求の手続き:

    • 営業保証金:債権者が直接供託所に請求
    • 保証協会:協会を通じて請求

  4. その他のメリット:

    • 営業保証金:特になし
    • 保証協会:各種研修や情報提供などのサービスあり

 

多くの宅建業者が保証協会への加入を選択する傾向にありますが、事業規模や経営方針によっては営業保証金の供託が適している場合もあります。

 

全国宅地建物取引業保証協会の公式サイト

 

保証協会の詳細な情報や加入のメリットについて、全国宅地建物取引業保証協会の公式サイトで確認できます。

宅建業法 営業保証金に関する注意点

営業保証金制度を利用する上で、以下の点に特に注意が必要です:

  1. 供託金額の確認:
    事業拡大に伴い支店を増設した場合、追加の供託が必要となります。
  2. 届出の期限遵守:
    供託後の届出や、還付による不足額の追加供託と届出は、法定期限内に行う必要があります。
  3. 営業保証金の管理:
    供託した営業保証金は、宅建業者の財産ではありません。他の目的での使用や担保提供はできません。
  4. 廃業時の手続き:
    宅建業を廃業する際は、営業保証金の取戻し手続きが必要です。ただし、債権者への公告期間(6ヶ月)が必要となります。
  5. 保証協会との併用不可:
    営業保証金の供託と保証協会への加入は、併用することができません。どちらか一方を選択する必要があります。

 

これらの点に留意しながら、適切に営業保証金制度を利用することが、宅建業者としての責任ある事業運営につながります。

まとめ:宅建業法における営業保証金の重要性

営業保証金制度のポイント

🔑

目的

 

消費者保護と健全な不動産取引の実現

⚖️

法的義務

 

宅建業開始前の供託と届出が必須

🔄

継続的管理

 

還付時の追加供託など、適切な管理が重要

 

営業保証金制度は、宅建業法の根幹を成す重要な制度の一つです。この制度を通じて、消費者保護と健全な不動産取引市場の維持が図られています。宅建業者にとっては、法的義務であると同時に、自らの事業の信頼性を担保する手段でもあります。

 

適切な金額の供託、期限内の届出、還付時の迅速な対応など、営業保証金に関する各種手続きを確実に行うことは、宅建業者としての責任ある事業運営の基本となります。また、事業規模の拡大や縮小に応じて、適切に営業保証金を管理していくことも重要です。

 

一方で、保証協会への加入という選択肢もあることを忘れてはいけません。自社の事業規模や経営方針、将来的な展望などを総合的に考慮し、営業保証金の供託と保証協会加入のどちらが適しているかを慎重に判断することが求められます。

 

宅建業を営む上で、営業保証金制度を単なる法的義務としてではなく、消費者との信頼関係を築くための重要な基盤として捉えることが大切です。この制度の本質を理解し、適切に運用していくことが、長期的な事業の成功につながるのです。

 

最後に、営業保証金制度に関する法改正や運用の変更にも常に注意を払い、最新の情報を把握しておくことをお勧めします。宅建業は、社会経済の変化に伴い、制度面でも常に進化しています。そうした変化に柔軟に対応できる姿勢を持つことが、プロフェッショナルな宅建業者としての資質を高めることにつながるでしょう。

 

国土交通省:宅地建物取引業法関連情報

 

宅建業法や関連制度の最新情報について、国土交通省のウェブサイトで確認できます。定期的にチェックすることをお勧めします。




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