宅建業法 反社会的勢力の排除と義務

宅建業法 反社会的勢力の排除と義務

宅建業法における反社会的勢力排除の重要性と具体的な対応策について解説します。不動産取引の安全性を高めるために、宅建業者はどのような義務を負うのでしょうか?

宅建業法 反社会的勢力排除の概要

宅建業法における反社会的勢力排除の重要ポイント
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法的根拠

宅建業法改正により反社会的勢力排除が明確化

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契約書対応

反社会的勢力排除条項の導入が必須

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確認義務

取引相手の属性確認と反社チェックの実施

宅建業法における反社会的勢力の定義

宅建業法における反社会的勢力とは、主に暴力団、暴力団関係企業、総会屋などを指します。具体的には、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定される暴力団員、およびその関係者が該当します。

 

宅建業法では、これらの反社会的勢力を不動産取引から排除することを目的として、様々な規制や義務が設けられています。

反社会的勢力排除の法的根拠と経緯

反社会的勢力排除の法的根拠は、2015年4月1日に施行された改正宅建業法にあります。この改正により、宅地建物取引業者の欠格事由に「暴力団員等」が追加されました。

 

国土交通省:不動産取引からの暴力団等反社会的勢力の排除に向けた取組について
この改正の背景や詳細な経緯について解説されています。

 

この改正以前から、業界団体による自主的な取り組みは行われていましたが、法改正によって法的な裏付けが与えられ、より強力に反社会的勢力の排除を進めることが可能になりました。

宅建業者の反社会的勢力排除義務

宅建業者には、反社会的勢力との取引を防止するために、以下のような義務が課せられています:

  1. 取引相手の属性確認
  2. 契約書への反社会的勢力排除条項の導入
  3. 反社会的勢力との関係が判明した場合の契約解除
  4. 従業員教育と社内体制の整備

 

これらの義務を適切に履行することで、不動産取引の安全性と信頼性を確保することが求められています。

反社会的勢力排除条項の具体的内容

反社会的勢力排除条項は、契約書に盛り込むべき重要な要素です。一般的な排除条項には以下のような内容が含まれます:

  • 契約当事者が反社会的勢力でないことの表明保証
  • 反社会的勢力との関係が判明した場合の契約解除権
  • 損害賠償に関する規定
  • 暴力的要求行為等の禁止

 

大阪府宅地建物取引士センター:反社会的勢力に関する説明義務について(判例解説)
反社会的勢力排除条項に関する判例解説が掲載されており、実務上の注意点が理解できます。

 

具体的な条項例:

(反社会的勢力の排除)

第○条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
1. 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。
2. 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。
3. 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
4. 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
① 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
② 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為

宅建業法における反社チェックの実務と課題

反社チェックは、取引相手が反社会的勢力でないことを確認する重要なプロセスです。実務上の主なチェック方法には以下のようなものがあります:

  1. 身分証明書の確認
  2. 反社データベースの利用
  3. インターネット検索
  4. 警察や暴力追放運動推進センターへの照会

 

しかし、これらの方法にも限界があり、完全な排除は困難です。特に以下のような課題があります:

  • データベースの更新頻度や網羅性の問題
  • プライバシー保護との兼ね合い
  • 巧妙化する反社会的勢力の手口

 

これらの課題に対応するため、宅建業者は常に最新の情報を収集し、チェック方法を改善していく必要があります。

反社会的勢力排除と個人情報保護法の関係性

反社会的勢力のチェックを行う際、個人情報の取り扱いに注意が必要です。個人情報保護法との関係で、以下のポイントに留意しましょう:

  1. 利用目的の明示
  2. 必要最小限の情報収集
  3. 適切な情報管理と廃棄
  4. 本人の同意取得

 

反社チェックの目的を明確に説明し、取得した情報を適切に管理することで、法令遵守と反社会的勢力排除の両立を図ることが重要です。

 

個人情報の適切な取り扱いについて、詳細なガイドラインが示されています。

宅建業法 反社会的勢力排除の実践方法

契約書作成時の注意点と反社条項の記載方法

 

契約書に反社会的勢力排除条項を盛り込む際は、以下の点に注意が必要です:

  1. 明確な定義:「反社会的勢力」の定義を具体的に記載
  2. 解除条件:反社会的勢力との関係が判明した場合の契約解除権を明記
  3. 損害賠償:違反時の損害賠償について規定
  4. 表明保証:契約当事者が反社会的勢力でないことの表明保証を含める

 

具体的な記載例:

第○条(反社会的勢力の排除)

1. 甲及び乙は、現在及び将来にわたり、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し保証する。
(1) 暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団等その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)であること
(2) 反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること
(3) 反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
(4) 自己若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること
(5) 反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
(6) 役員又は経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること

 

2. 甲又は乙は、自ら又は第三者を利用して次の各号のいずれかに該当する行為を行わないことを確約する。
(1) 暴力的な要求行為
(2) 法的な責任を超えた不当な要求行為
(3) 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
(4) 風説を流布し、偽計を用い又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為
(5) その他前各号に準ずる行為

 

3. 甲又は乙が、前2項のいずれかに違反した場合には、相手方は、何らの催告を要せずして、本契約を解除することができる。

 

4. 前項の規定により本契約が解除された場合には、解除された者は、その相手方に対し、相手方の被った損害を賠償するものとする。

 

5. 第3項の規定により本契約が解除された場合には、解除された者は、解除により生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。

反社会的勢力チェックの具体的な手順と方法

反社会的勢力チェックを効果的に行うためには、以下のような手順と方法を組み合わせて実施することが重要です:

  1. 事前スクリーニング

    • 取引申込書や本人確認書類の確認
    • インターネット検索による情報収集

  2. データベース照会

    • 業界団体が提供する反社データベースの利用
    • 民間の調査会社が提供するデータベースの活用

  3. 外部機関への照会

    • 警察や暴力追放運動推進センターへの相談
    • 弁護士や専門家への相談

  4. 継続的なモニタリング

    • 定期的な再チェック
    • 取引中の異常な言動や要求のチェック

 

これらの手順を組織的かつ継続的に実施することで、反社会的勢力との取引リスクを最小限に抑えることができます。

反社会的勢力との関係が判明した場合の対応策

万が一、取引相手が反社会的勢力であることが判明した場合、以下のような対応が必要です:

  1. 速やかな事実確認

    • 情報の信頼性を慎重に確認
    • 社内での情報共有と対応方針の決定

  2. 契約解除の検討

    • 契約書の反社条項に基づく解除手続きの準備
    • 弁護士への相談と法的リスクの評価

  3. 関係機関への相談・通報

    • 警察や暴力追放運動推進センターへの相談
    • 必要に応じて所管官庁への報告

  4. 取引中止と損害の最小化

    • 速やかな取引の中止
    • 損害賠償請求の検討

  5. 再発防止策の策定

    • チェック体制の見直しと強化
    • 従業員教育の徹底

 

これらの対応を迅速かつ適切に行うことで、被害を最小限に抑え、企業の信頼性を維持することが可能となります。

宅建業者向け反社会的勢力対策研修の重要性

反社会的勢力排除を効果的に行うためには、宅建業者とその従業員に対する継続的な研修が不可欠です。研修の主な内容としては以下のようなものが考えられます:

  1. 反社会的勢力の最新動向
  2. 法令や業界ガイドラインの解説
  3. チェック方法の実践




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