宅地建物取引業法(宅建業法)では、不動産取引における仲介手数料(報酬)の上限が定められています。これは、消費者保護と公正な取引を確保するためです。
一般的な報酬の上限は以下の通りです:
売買・交換の場合:物件価格の3%+6万円(上限)
賃貸の場合:賃料1ヶ月分(上限)
ただし、これらの金額には消費税が加算されます。
空き家問題への対策として、2018年に低廉な空き家等の報酬に関する特例が設けられました。この特例は2024年7月1日からさらに拡大されます。
特例の主な内容は以下の通りです:
対象物件:800万円以下の低廉な空家等(従来は400万円以下)
報酬上限:30万円の1.1倍(33万円)まで可能(消費税別)
適用条件:現地調査等に通常より費用がかかる場合
この特例により、不動産業者が低廉な空き家の仲介に積極的に取り組むことが期待されています。
報酬規定の改正には、以下のような背景と目的があります:
空き家問題の深刻化:
日本の空き家数は約849万戸(2018年時点)
空き家率は13.6%で増加傾向
地方創生と移住促進:
地方への移住ニーズの高まり
空き家の有効活用による地域活性化
不動産市場の活性化:
低廉な物件の流通促進
宅建業者の空き家ビジネス参入支援
デジタル化への対応:
電子契約の普及
リモートワークによる地方移住増加
これらの課題に対応するため、空き家の流通を促進する環境整備が求められています。
2024年7月1日以降、800万円以下の低廉な空家等の仲介手数料は以下のように計算されます:
通常の計算方法による金額
現地調査等に要する費用相当額
上記1と2を合計した金額が、新たな上限となります。ただし、33万円(消費税別)を超えることはできません。
具体例:
物件価格500万円の空き家の場合
通常の計算:500万円×3%+6万円=21万円
現地調査等費用:10万円(仮定)
合計:31万円(上限の33万円以内)
注意点:
買主からは通常の報酬しか受け取れません
事前に売主への説明と合意が必要です
報酬規定の改正は、空き家対策に以下のような影響を与えると予想されます:
空き家の流通促進:
低廉な物件の仲介が増加
遠隔地の空き家も取り扱いやすくなる
地域活性化:
移住者の増加による人口維持
空き家の再生による街並み改善
不動産市場の変化:
低価格帯物件の取引増加
地方の不動産価値の再評価
新たなビジネスモデルの創出:
空き家管理サービスの拡大
リノベーション事業の活性化
一方で、以下のような課題も考えられます:
低廉な物件への過度な集中
報酬引き上げによる取引コストの上昇
これらの影響を踏まえ、バランスの取れた空き家対策の推進が求められます。
空き家対策の具体的な取り組みについては、以下のリンクが参考になります。
このページでは、空き家対策の基本的な考え方や具体的な施策が紹介されています。
宅建業者が空き家の仲介を行う際は、以下の点に注意が必要です:
物件調査の徹底:
遠隔地の場合も現地確認が重要
建物の状態、権利関係の確認
適切な価格設定:
地域の相場を考慮
改修費用を加味した価格提案
買主のニーズ把握:
移住目的か投資目的か
リノベーション希望の有無
地域情報の提供:
生活インフラの状況
地域コミュニティの特徴
アフターフォロー:
空き家管理サービスの提案
地域とのつながりサポート
コンプライアンスの徹底:
報酬規定の遵守
重要事項説明の確実な実施
これらのポイントに留意することで、空き家の円滑な流通と顧客満足度の向上につながります。
空き家の適切な管理方法については、以下のガイドラインが参考になります。
このガイドラインでは、空き家の管理方法や活用方法について詳しく解説されています。
以上、宅建業法における報酬規定の改正と空き家の仲介手数料について解説しました。この改正が空き家問題の解決と不動産市場の活性化につながることが期待されます。宅建業者の皆さんは、この機会を活かして新たなビジネスチャンスを探ってみてはいかがでしょうか。